下肢静脈瘤のタイプによって選択すべき治療法が異なり、3種類に分類できます。
血液の逆流があるタイプ(伏在型)
今すぐ上記の治療を受けずに症状のみ和らげたい場合など
血管内レーザー治療
従来の下肢静脈瘤の治療は、主にストリッピング治療が主流でした。しかし、切開を要し、通常入院が必要であったため、患者さんの負担がどうしてもありました。
そこで患者さんの負担を軽減するため、まず810nm波長の血管内レーザー治療が平成14年に日本で初めて行われました。この際の執刀医は当院の松本院長で、高知大学医学付属病院にて行われました。その後、こちらの医療技術を発展させた980nm波長の血管内レーザー治療が登場したことにより、切開無く、入院を必要としない日帰り治療として日本でも確立されました。この980nmの血管内レーザーは平成23年に厚労省の承認を受け、保険医療で受けられるようになり、最近ではストリピング手術はあまり行われなくなり、下肢静脈瘤の標準的治療となりました。
まつもとデイクリニックでは、平成23年から平成26年初旬までに980 nm波長レーザーによる治療を行い、さらに平成26年中旬からは1470nm波長レーザーによる治療も厚労省から保険収載されたことを受け、当院でもこの治療に切り替えて行っています。
高周波カテーテル治療
高周波カテーテル治療も血管内レーザー治療とほぼ同様の機序で行う血管内治療です。
本治療はレーザーではなく、電流による熱を利用した治療方法です。
こちらの機器も平成26年中旬に保険適応され、日本でも治療ができるようになりました。
当院でも保険適応されたことと同時に導入し、治療を行なっております。
適応症例
伏在静脈本幹の弁不全を認める症例。
なお多少の拡張・蛇行がある部位でも、経験豊富な医師であれば、治療することは可能と考えております。
治療方法
Ⓐ血管内レーザー治療
膝内側かふくらはぎから細いレーザーファイバーを挿入して、伏在静脈本幹をレーザー照射することで血管壁が温められ縮小し、直後に中の血液が固まることで、血管を塞ぐことができます。
これにより、血液の逆流を止めます。
Ⓑ高周波カテーテル治療
膝内側かふくらはぎからカテーテルを挿入し、伏在静脈本幹を熱することで血管壁が温められ縮小し、直後に中の血液が固まることで、血管を塞ぐことができます。
これにより、血液の逆流を止めます。
治療当日の流れ
1治療準備
治療着に着替えていただき、足の静脈エコー検査をし、治療部位の確認をした上で、マーキングを行います。
2治療室に入室
治療室に移動して、点滴、心電図、血圧などのモニターを付けるなどの準備を行います。
3治療 開始
鎮静剤を投与し、眠った状態で、局所麻酔を行い、治療を開始いたします。必要に応じて目立つコブの切除を同時に行います。
治療所要時間は20〜40分前後です。
4治療室を退室
治療終了後は、専用のストッキングを装着し、歩いて退室します。お着替え後、術後の診察を受け、ご帰宅となります。
5術後について
翌日にご来院いただき、処置を及び足の静脈エコー検査を行い、治療経過の確認を行います。これを行うことで、きちんと逆流が止まったか、血栓のフタが大きすぎないかなどのチェックを行います。その後は、3~14日目の間に1~2回来院して、創部の確認などを行います。以後は年に2回経過観察のための来院をお勧めしています。
瘤切除とは
血管内レーザー治療や高周波カテーテル治療は浅い部分や太い部分には、不適切な場合があります。
なぜかというと、このような部位は治療後に硬いシコリとして数ヶ月残ることが予想されるためです。
したがって、浅い部分や太い部分の治療には、切除が望ましい場合があります。
現在では、TLA麻酔という薄い濃度の局所麻酔を多量に注入することで、小さな傷で切除することが可能になりました。
通常は血管内レーザー治療や高周波カテーテル治療と同時に行うことが多いですが、一部の側枝型の治療にも用いることができます。
硬化療法とは
硬化剤の注射と弾性包帯による圧迫で患部の静脈を閉塞させる治療法です。治療の対象は、クモの巣状タイプや網目状タイプが主体ですが、一部の側枝型も適応となります。また、伏在型の本幹をレーザーや高周波で治療した後に遺残した瘤あるいは部分的に再発した瘤も適応となります。
まず血管を固める硬化剤を静脈に注射し、弾性包帯で圧迫することで血管の内側を圧着させます。その後、完全に閉塞した静脈は徐々に縮小して組織に吸収され、最終的には消えていきます。大きく太い瘤に対しては消失するのに時間がかかったり、中期的に圧痛が残ることが問題となります。したがって、硬化させた瘤の早期消失を期待したい場合は、TLA麻酔下に行う小切開からの瘤切除術も考慮するべきです。
弾性ストッキングとは
弾性ストッキングは、足に適度な圧力をかけることで余計な血液が足に溜まることを予防し、あわせて足の深部にある静脈への流れを助ける医療用のストッキングです。着用は、朝、起きたら履いて、寝るときは外します。
医療用の弾性ストッキングは、足首への圧迫が一番強く、上に行くに従って段階的に圧力が弱くなるよう設計されています。これは段階的圧迫法と呼ばれるもので、これにより血液が心臓の方に戻りやすくなります。ただし、正しく装着しないと十分な効果を得ることができませんし、トラブルになる可能性もありますので、しっかりと指導を受ける必要があります。
弾性ストッキングなどを使った圧迫療法は、症状を和らげ、進行を防止することが目的であり、下肢静脈瘤そのものを治療する効果はありません。